復縁元彼復縁



<幸福は狭さの中に>
自分の幼少時代を思い出してみればすぐわかる。人間関係も行動半径もとても小さかった。にもかかわらず、わたしたちは満ち足りて幸せだった。このことからわかるように、生きる環境が狭くなるほど、関心や利害や知識の範囲が狭くなるほど、わたしたちの苦しみは少なくなり、また満ち足りやすくなる。

暮らしを単純にし、限られた状況の中にいることに甘んじ、それでもなお退屈さを覚えないのならば、人生はずっと軽くなる。


<苦しみにも2つある>
自分の今の苦しみがどういうものであるか、じっくり調べてみることが必要だ。もし願望が満たされない、欲しいものがまだ得られない、やりたいことをまだ十分にできない、という苦しみならば、それは小さな苦しみだ。なぜならば、それは未来に向かって開かれた不安だからだ。そしてまだ希望が無限に隠されている。

大きな苦しみとは、過去に向かって深い穴があいている後悔だ。それはとりかえしがつかないことへのやりきれぬ苦しみだからだ。希望の扉すらすでに閉じられている。癒すのは時間だけである。


<人生の重荷>
重い荷物は船の底に積むものだ。こうすると船が転覆しにくく、安定して航行できるようになるからだ。同じように、わたしたちにも重荷が必要なのだろう。その重荷とは、人生に対するある程度の不安や苦しみ、それから生きていくうえでの困難である。


<苦しみなき生>
まさか、苦しむことなく生きたいと考えたりしてはいないだろうね。苦しみなく生きるというのはまさに矛盾であり、そのようなことはこの世界ではありえないからだ。

どんな人間でも生きている以上、痛い思いをし、苦しむのである。それがまさに生きるということだ。なんの痛痒も感じない状態というのは、おそらく死者の状態であろう。


<眼前の巨大な小石>
小指の先ほどのちっぽけな小石であっても、すぐ目の前にかざすと、それだけで全世界を覆いつくしてしまう。これとまったく同じように、ちょっと空想をしただけで、わたしちの頭はそれで埋まってしまい、手元のことがおろそかになってしまうものだ。しかも、その小石ほどの空想や思いはなかなか頭の外に出ていってくれない。だから、過去や、ささいな事柄を思い出してあれこれ悩まないように。

そうしないと、今すぐにたずさわらなければならない問題や仕事の時間をだめにしてしまう。それは、自分が生きている今というたいせつな瞬間を失うということなのだから。


<本を買う人>
1冊の本を買う。すると、なぜかその本を読むたっぷりとした時間まで手にしたかのように錯覚してしまうものだ。ひどい場合には、その本の内容がまるまる自分のポケットに入ってしまったかのようにさえ思っている。


<喜びすぎず嘆きすぎず>
人生には不意にさまざまなことが起きる。まさかと思われることが他ならぬ自分の身の上に起きる。しかし、どんなことが起きても、異常に喜んだり、あまりにも悲嘆して投げやりになったりしないほうがいい。なぜならば、何事もすぐに、あるいはじきに変化するからだ。

たとえば、自分にとってひどく不都合だと思っていたことがあとになって自分のためになっていたということもある。あれだけ喜んでいた事柄がのちの面倒事の火種になるということもあるからだ。人の判断は誤りやすい。特にその場での判断は誤りやすい。そのことをよく知っておいたほうがいい。





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<愚かな自己喪失>
老いてくればわかる。得たものはいつしか失われる。物も、人も、地位も、つながりも、きらめいていたものはみな錆びる。やつれ、消えていく。

そういうことがつらい喪失や絶望に感じられるならば、それらを得るために自分自身を棄ててきたからだ。多くの人はこの愚かな行為に気づいていない。多くの人は世間的に見映えのするものが価値あるものだと思い込んで、それを獲得することに汗水を流してやまない。そうして自分の資質や人格の豊かさに水をあげないのだ。

時を経ても失われずひからびない豊かさは、この自分自身の感性と人格だというのに。


<人生の善>
この人生のよいところとは何か。もしかしたら、人生が短いということではなかろうか。


<成熟>
葡萄も然り、酒も然り、人も然り、成熟するためには相応の時間がかかる。短縮などできない。ただ長い時間を要する。完全で、豊かに、そして気高く思われるほどに成熟するには。


<原因の正体>
人の苦しみの原因も喜びの原因もまったく同じだ。どの場合も、原因は現実にある事柄ではない。頭の中の抽象的な思いが原因になっている。

たとえば、たくさんの金銭をもらったならば嬉しいだろう。その嬉しさはしかし、たくさんのお金でいろんなことができるという抽象的な思いそのものにすぎない。現実として何か喜ばしいことが起きたわけではないのだ。


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